こんにちは、Office Dの山﨑です。
3記事目となる本記事の事例の主人公は、100人規模の地方中小メーカー企業です。
今回の事例では、「経営者の明確な意思表示」をすることが組織変革の起点となることをお伝えできればと思います。
きっかけは、僕の知人からの相談でした。明確に現場で起きている課題を解決するために彼が外部パートナーとしてアサインをしたものの、実際に蓋を開けてみたら現場の課題が大き過ぎて、具体的な現場の問題解決に伴走をして事業推進ができるパートナーが必要ということでした。
そこで、実際に社長にお会いしてお話しを伺うことになりました。社長からは、現場に指示を与えているのにも関わらず、現場から主体的な問題解決の行動が起きないことで経営者である社長が現場の問題解決に奔走しているというお話しを伺いました。
起きている問題は山の数ほどありましたが、私が捉えた課題設定はただひとつでした。
それは、経営者が経営に集中できていないことにより、会社の明確な方向性の意思表示ができていないということでした。
そこで、私はこのようにお伝えしました。
「社長が経営に集中をすることができない状況が続く限り、組織や事業をどのようにしていきたいかという明確な経営者の意志に基づいた体制づくりをすることができません。現場の主体性を待つのではなく、経営の源泉である経営者の意思表示をしてアクションをしていかない限り、今の状況は変わりません。」
実は、私のところに来るご相談のほとんどが現場の課題解決をテーマとしたものなのですが、実際にお話しをしてみるとどのような組織でも問題は現場にあるのではなく、経営者側から明確な会社の方向性をメッセージングできていないことが原因で起きていることがほとんどです。
これまでの2つの事例も同じです。どのようなご相談でも、私の課題設定とお伝えすることは変わりませんが、経営者である社長が、経営者である自分自身に起きている課題であることを受け止められるかどうかがOffice Dの支援のスタート地点になります。
今回の事例の社長は、私のこの言葉を真摯に受け止めて下さりました。
こうして大きなプロジェクトがスタートしました。
こうして訪れた最初の関門は、社長自身が会社の方向性を明確にするために経営に集中する時間を作ることでした。実際に社長が現場の問題解決に動かなくても良いための人材配置などの基盤作りをしていきましょうということになりましたが、人を採用するためのアクションを経営が取っていなかったため、あまりにも人手が足りていない状況でした。
そこで、社長にはまず、どの部門でどれだけの人が足りていないのかを把握し、いつまでに採用をする必要があるのか、そしてその予算を決めていただいた上で人事のマネジメントをお願いしました。
そして、そのアクションを具体化するためのチームとして私と当社の提携先パートナー4名が採用プロジェクトを立ち上げることになりました。
また、社内メンバーの中から社長に求人の実務を行えそうな方を採用担当として任命していただきました。
社長には自らの言葉で、明確に全社で100名採用をするということを示してもらった上で、今会社で何が起きているのか、そしてこの採用にはどの様な意味があるのかを伝えてもらいました。
こうして明確な方向性が示された中では、採用活動におけるメンバーの自主的なアクションがどんどん増えていきました。
私は、こうして日々起きてくる自主的なグッドアクションをこと細かに拾って社長にフィードバックをするということをひたすら続けていきました。
例えば、社長に人事異動をしていただいたAさんが壁にポスターを貼って自主的に皆に呼びかけてくれたんですよ、自発的な行動で素晴らしいですね。といった様な、今までも起きていたにも関わらず社長には見えていなかった自発的なアクションを社長に伝え続けていったのです。
こうして半年ほどが経過した頃、採用の成果が出始めて新しいメンバーが20名ほど加わり、会社がもっと人を採用して会社を伸ばしていこうというモードになっていきました。
そこで、私が「社長の会社は素晴らしい会社ですよね。」と社長にお話ししたところ、
「今まで自分が経営をしてきて、自分の会社がこんなに素晴らしいと思ったことがありませんでした・・・。ありがとうございました。」
と、涙ながらにお話ししてくださったのです。
こうして、社長が組織の変化をポジティブに受け止め、うちの会社だったらできるという意識に変容を遂げたことで採用活動も順調に進み、業績も伸びています。
多くのの経営者の方は、「まだこれができていないんです。」とメンバーができていないことを羅列します。もちろんそれも正しいのです。でも、逆にできていることは何かを尋ねると答えることができない経営者の方も多いのです。
今すでに在るもの、見えてはいない主体性に経営者が気づき、対話を通じてポジティブなフィードバックが交わされる循環がつくられると、組織は想像以上の変容を遂げていくのです。
ここまでの3つの事例をお読みいただいた方にはもうお分かりいただけると思いますが、Office D、私がしている関わりは、経営者の視点を「できていること」に当てるためのフィードバックをし続け、組織内に然るべき質と量の対話を生み出すための伴走なのです。